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カンッ

撃ち込まれる鉄鎖は数を増す。

カンッ

撃ち込まれるは楔。
体の自由はもとより、全ての尊厳を奪うもの。

カンッ

それは途切れることのないリズムはさながら鎮魂歌。
しかし決して癒しではない。
更なる痛みと、更なる憎しみの増幅器。

カンッ




カンカンッ、
カンカンカンッ、

「もう終まいかい?ヴァンパイアさんさッ」

繰り出されるのは銃剣の刃先。
目にも止まらぬその捌きは確実に体の急所を抉っていく。

「ヴァルロッサのババァもキツイんじゃねーかッ!」

手の甲を使って何とか凌いではいるが、
明らかにこちらが押されている。
再生力に頼り切ったこの戦い方では終わりは見えているか。

「ハンッ、ホラホラっ!どんどんいくよっ!」

片手だけに握られていた銃器が両手に増える。
左右上下。
すべての制空権は彼女にあり、
俺にあるのはさしずめ自分の体のみ。
彼女の銃と俺の手とが交差するたびに、
その視界はさらに赤へと染められていく。
一見流れるような舞曲の様な太刀回りでありながら、
時折見せるのは獣の獣呀のそれだ。

「ほらっ、全力出しなよ!人間だからって遠慮すんじゃないよっ!」

この距離はこの女の歯牙の上。
一旦距離を取るため後方へと飛ぶ。

「ハッ!逃がさないよッ!」

手に持つ銀と黒、二つの銃口が俺を捉える。
軽い反動とともに十字架より鋳造された銀の弾丸が滑り出す。

飛び道具ッ!
手から流れ出た血を咄嗟の判断で両手にコーティングし、
視界のクロック処理を上げる。
スローになった世界で玉の弾道を把握し、
僅かに弾丸自体を叩く様にして逸らす。

「ッ!」

しかし、直後のヴァンパイアの目にヴァルロッサの姿は映らない。
代わりに映るのは此方へと飛来する銀の銃刃。
表面を金剛被膜により強化されたナイフを空中に
飛散させた血を破裂させ宙に弾く。

「くっそがッ!」

「いや、あんがとさッ!」

声のする背後の上空。
そこには今弾いたばかりの銃が握られていた。

「蜂の巣よろしくッ!」

次の瞬間、二つの孔は有りっ丈の弾丸を吐き出した。






神は人を試す。
どんな状況になっても人は神を裏切らない、かを。


しかし、神はいとも簡単に裏切る。
神という存在にとってそれは裏切りという自覚はない。
しかしどんなに信仰心が篤くとも、
どれほどに自己犠牲を持ったとしても。
神は絶対無二に信仰者を救うなどと云うことは無い。

神に悲しみと後悔の二語は無く、
あるのは更なる信仰の二文字。

「あなたに不幸が訪れたのは信仰が足りなかったからなのです。」
聖職者の決まり文句は決まっている。

そこに全てへの祝福は無く、
あるのは選び抜かれた者だけへの試練というなの苦痛。

光とは信仰。
その日焼かれても神への信仰は止めない。

十字架は神の見姿。
それを見つめ、その目がつぶれようと眼はそらさない。

その存在は許されず、流動する世界には拒絶され、
福音を聞くことも許されずに時をとどめる鏡に映ることもない。







吐き出された弾を全て避けきるのは不可能に近い。
だが避けきれないということも無くはない。
腰に部分的に意思を与え、獣化させる。
残りの部位を瞬間的に全て霧化させるが、

「こりゃ銀だよッ!」

「がぁッ!!!」

体の上半身下半身至る所が欠損していた。
しかも銀相手じゃ分が悪すぎる。
銀で傷つけられた部位は負傷個所をもう一回刳り直さないと
再生が始まらない。
「難儀な体だ…ほんとにな。」
銃創となった足と腕の傷を自分の指で刳る。
足が動き、腕さえ上がればそれだけでも動けば十分なのだ。

「ハンッ。今さら何言ってんだい?」

「ははは、確かに今さらだな。」



思い出すのはあの言葉。

―殺しむる勿かれ
 一度その一線を越えれば屍を築く一生とならん
 ならばその命寧ろ死すべし

あぁ、俺は何度だって死んでやるさ
今までも何度となく人の信仰心を試すために俺は
殺され、殺され、殺されてきたんだ
なら何度でも今まで通り殺されてやるさ
そして何度でも俺はまた生まれる
程よく湿った墓場の土と悲しみに暮れる
死者の亡骸さえあればいいのだから



超速再生の成せる業か、
傷は肉が蠢くようにして渦巻いたかと思うと治っている。
腹部から流れ出る血を掬う。
赤い…。
こんなに赤く、人と同じ血が流れているの俺は違う。
受け入れる受け入れないの問題ではない。
そうできていたのだ。
生まれた時から、そうできていた。
そうなるように・・・。


「我は不倶戴天。
 神に創られ、神に仇名す存在。」



溜め込むのは覇気。
優しく折りたたむように練っていき、
それをすべて右手に集約する。

既に体躯の至るところはすでにボロボロで
霧になることはおろか、部分変異すら難しい。
ならば、この躯肢の全てを賭けてこの女に相対するだけだ。

俺からの距離は約7歩。
奴の足なら5歩と掛からず俺に食らいつくだろう。
だが、それでいい。
腰だめに溜め込んだ手刀をさらに体の後背へと廻す。
左手ですくい上げた血で右腕に血の鎧を施す。


すでに彼女との距離は5歩。

込めるのはただの力だけではなく、捻りとその遠心力。
そして、彼女の刃に削られたこの骨身の腕こそが最高の武器。
純粋な力の前に小細工はいらない。

3歩、
捻り上げられた腕がまるで巨大なバリスタの如く飛び出す。
完全な間合いと見切り。
俺の右腕は女の胸元に吸い込まれていく。

避けようのない一撃!
どう避ける!?

「ヴァルロッサァァァアアアッ!!!」


「甘いねぇ!」

次の瞬間、目に飛び込むのは鮮血。
次点で分かったのははじけ飛び、まるでスルメの様に裂かれていく腕。
そう、避けるまでもなかったのだ。
彼女の双翼に握られた刃は意図もた易く渾身の一撃を切り裂いていく。
肘から先までを軽々と切り裂かれ、
俺は地面に為すすべもなく膝をつく。

「これで、今回も終わりかよ…」

これでまた最初からだ。
また生まれなおし、また斃される。
それが不変であるのは神がいる限り変わらない。
別にこれが初めてじゃないし、何度かなんて覚えちゃいない。


「いや、これが始まりさ。」
彼女は俺の前まで来て膝をつく。

「神なんてこの世にゃいないのさ。
 あるのは雑多混濁された人の意志と星の見る夢だけ。
 アンタが銀やにんにくが苦手なのはただのアレルギーだし、
 今じゃ太陽の光を直接浴びたらやけどする奴なんて雑多にいるさ。」

この女何を言ってやがる?
神がいない?

差し出されたのは左手。

「な、なんのつもりだ?」

「何のつもりだ、ってのは聞き捨てならないねぇい。」
そいう言うと女は下を向いた俺の顔を差し出したその手で持ち上げる。

「この涙はなんだい?」

涙?
そんな・・ 

無傷の手で自分の頬に触ってみる。
確かに濡れていた。
手には確かに血ではなく、無色透明な水が付いていた。

「な、なんで…。」

はぁーッ、と女はヴァルロッサはあきれ顔で俺を見る。
「そりゃ死にたくないからさ。
 ホントに辛くて悲しい奴の目からは血の涙しかでないのさ。
 あんたのはそれとは違うさね。
 生きたい、生きたいってアタシには聞こえるよ。」


そういうと女は来ているジャケットの裏からタバコを取り出すと
ジッポを投げてよこした。
伸ばしてつかんだジッポ。
火照った手にはとても冷たかった。
しかしそれは逆に今確かにそこに自分が存在し、
確かに生(あ)ることを伝えていた。

「何ぼさっとしてんだい?ほら、火をおくれよ。」

ともった火は煙草に明かりをともす。
彼女は大きく一服すると、

「さてあんたのことはなんてよんだらいいんだい?」

名前…。
呼ばれない名前に意味はなく、
「そんな物はとうの昔に置いてきたよ…。」

「は~ん。」
そういうと女は手を顎にあて、
いかにも私は今考えていますというポーズを取る。
ポーズを取ったまま制止すること数秒。

「そりゃこまったね~。
 これからアンタはアタシの下僕なわけだからそれなりの名前がいるのさ。
 下僕1号はいやだろうさね?」

下僕…。
「そ、そんなの聞いてないぜ!」

「あ~ん?。誰がタダで人生相談するもんさ?」

「な…ッ」

「アタシの目的は最初からアンタのスカウトさ。
 あんたは今日、たった今からアタシのギルドの一員さね!」

ギャッハハハ!と大声をあげて笑う女。

今まで俺を殺しに来たどんな奴よりも俗っぽい。
しかし、今までのどんな奴よりもこいつは
「あんた良い奴だな…。」

「ハッ!何をいまさら!当然に決まってんだろうさね!」

裂かれた腕はすでに治りつつあり、
腹部の傷はすでに完全に塞がっていた。


「よッシ!決めたよ!
 あんたはイルバロンさね!
 恐ろしい男爵でイルバロン!
 いいセンスだろい?」

「イル…バロン。まぁ、あながち間違っちゃいないな…。」

既に再生くっ付いた右腕を確認しながら彼女にその手を伸ばす。

「おや、不倶戴天の息子がアタシに手を伸ばすのかい?」

嫌味を言う彼女の顔はうれしそうだ。
知っているのは彼女が双翼の駆り手だということだけ。
だが今はそれで十分だ。
俺の時間は永いのだから。

「もう不倶戴天は止めだ。今日からは恐男爵だ。」

「ハッ、順応の早い奴さね!
 さっきまで穴熊だった奴の言うことには聞こえんね。」

「別に好きで引き籠っていたわけじゃない。
 それが今さっきまで与えられていた役割だっただけだ。」


そう、生まれてこのかたずっと与えられた脚本。
もし、彼女に会わなければこのまま永遠にそのまま終りのないロールを
演じ切らなければならなかったのかもしれない。

「ハンッ。じゃぁ今からアンタのロールは何だってのさ?」

「そうだな…。
 とりあえずはアンタの言うとおり下僕一号ってところだな。」



俺は彼女に体を引き起こしてもらい立ち上がった。











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ん・・・
ヴァルヴァロッサじゃなかったっけ?
ヴァルロッサもアリなんすか?

久し振りの文学じゃの~~φ^^
【2008/06/03 16:01】 URL | かぜのお~ #-[ 編集]














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